鰻屋たひらでは、創業以来変わらず紀州備長炭を使った炭火焼きにこだわっています。現代では電気やガスを使った焼き台も多くなりましたが、なぜ私たちは手間のかかる炭火にこだわり続けるのでしょうか。
炭火焼きにしかできないこと
炭火の最大の特徴は、遠赤外線効果による均一な火入れです。電気やガスでは表面だけが焦げてしまいがちですが、炭火の遠赤外線は鰻の内部まで均一に熱を通します。これにより、外はパリッと、中はふっくらした理想的な焼き上がりになります。
紀州備長炭を使った炭火台。火加減の調整が職人の腕の見せどころ。
「炭の種類によって香りが全然違う。備長炭は匂いが少なく、鰻本来の味を邪魔しない。だからこそ、たれの香りと鰻の旨みだけが立つ。」— 三代目店主
火加減を見極める目
炭火の難しさは、火加減の調整にあります。炭の量、配置、送風の強さで温度が変わり、さらに鰻のサイズや脂の乗り具合によって焼き方を変える必要があります。これを見極めるのが職人の技。一朝一夕では身につかない、長年の経験が必要です。
当店の職人は最低でも5年間、炭火の前に立ち続けます。最初の1年は炭の扱い方だけを学び、2年目からようやく鰻に触れることが許されます。
串の打ち方一つで、火の通り方が変わる。
受け継がれる技術
鰻屋たひらの炭火焼きは、初代から三代目へと受け継がれてきた技術です。基本は変わりませんが、時代とともに鰻のサイズや質が変化するため、その都度調整を重ねています。変えることへの恐れではなく、本質を守りながら変化に対応すること。それが百年続く技術の秘訣です。
次の百年も、炭火の前で鰻と向き合い続ける職人がいる。その姿が、鰻屋たひらの根幹です。